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「ICO」のスタッフが制作した、青年が巨大なモンスター(巨像)達と戦うアクションゲーム。
「ICO」同様、世界を作り上げることに並々ならぬこだわりを感じます。
プレイヤーを世界に没入させる為、パラメータ等を極力表示せず、フィールドの音楽が無いのも前作同様です。
前作は古城が舞台でしたが、今回は広大なフィールドが舞台で、いきなりマップの隅々まで行く事が出来ます。
ゲーム的には徐々に範囲を広げた方が、プレイヤーは迷わずに済むし、制作者も管理が楽で都合が良いはずです。
しかし、そうはせずに、いきなり広大なフィールドに放り出されます。
世界そのものに自信がないと出来ない芸当です。
そしてその通り、美しくて神秘的な風景に心を奪われました。
単にリアルで絵が綺麗なのではなく、草原の色遣いや森の暗さと光の射し方、遺跡の佇まい等、美しいという単語以外に形容しがたい景色の連続です。
さて、フィールドのことばかり書きましたが、このゲームは巨像を倒すアクションゲームです。
倒す順番は決められているので、広大なフィールドの中から、次のターゲットが潜んでいる場所を探し出し、巨像と戦います。
道中にザコ敵は存在せず、戦闘は巨像のみです。
巨大な相手に普通に戦って勝てるはずがないので、フィールドのギミックや巨像の特徴を見極めて、それぞれ攻略していきます。
「ゼルダの伝説」のボス戦みたいな感じです。
ただ、巨像は本当にデカイので、生身の人間が必死で食らいつく姿はかなり独創的で新鮮です。
また、戦闘では音楽が流れ、こちらの「攻め時」になると曲調が変わり、雰囲気を盛り上げてくれます。
普段は音楽がないだけにメリハリがつくし、巨像を発見した時の満足感も中々のものです。
ただ、フィールドの美しい風景を見つけるのは心地良いのですが、いきなり放り出されるし、巨像の探し方もアバウトなので、なかなか見つからずにイライラする事もあります。
フィールドは馬で移動できますが、その馬の操作性もややまどろっこしいので、イライラに拍車がかかります。
が、馬の操作性はわざとやっているんでしょうね。
人間の操作もやや複雑に感じますし、そうする事によって、上手くいった時の快感にも繋がる訳ですから。
それに、巨像は基本的に動きがもっさりしていますので、プレイヤー側がキビキビ動作しすぎると、難易度が下がり過ぎますので。
まあ、今だから寛容的ですが、プレイ中は何度もやり直して罵声を浴びせたりもしましたけどね…。
特に、ジャンプの距離感が掴みづらい場面も何度かありましたので。
また、巨像を倒すことに特化した作品なので、どうしてもワンパターンに感じてしまう部分もあります。
さて、難点も述べましたが、かなり見どころの詰まった作品です。
何と言っても、フィールドを軸に「世界」をここまで作り上げた事を評価したいです。
「ICO」から更に密度が上がっていて、驚きと嬉しさを覚えました。
馬の挙動(ジャンプや狭い通路を嫌がる素振りなど)や、巨像に弓矢を射ると矢が刺さったままだったり、距離によって馬の呼び方が違ったり、無機質で統一感のある巨像のデザインなど、まだまだ沢山ありますが、細かい部分まできっちりと作られていて、こうした積み重ねが「世界」の完成度を高めているんですよね。
また、像破壊のエフェクトや光と影の表現、イベント時のカメラワークなど、映像のセンスの高さを感じます。
特に、言葉で語らずに映像で「世界」を語り、美しくリアルの映像なのに見る者の想像力を激しく掻き立て、制作者の映像作家としての力量は相当のものです。
ゲームに限らず、映像関連の職に就いていて、この作品をプレイして悔しい思いをした人は少なくないはず。
とても刺激的な作品で、次回作が大いに気になります。
ゲーム的にも、雰囲気ゲーと触って楽しいアクションを両立した稀有な存在と言えるでしょう。
【ゲームクリアー】
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